• ホットケーキの厚みは店主の厚み・大山「ピノキオ」

    この厚みを見て何も思わない人が、果たしてこの世にいるのでしょうか?


    Google先生に「ホットケーキ」とたずねると、一般的な単語にも関わらず上位に出てくる喫茶店「ピノキオ」さんのホットケーキ。この写真を見てジッとしていられないのが今の私です。写真から漂う甘い香りとその厚みに、私の足は板橋区大山という土地へ吸い込まれていったのでした。

    ピノキオさんに鼻息荒く突撃したのは、11月下旬。
    大雨の日の午後でした。

    数年ぶりの再会となる、大学時代の友人と共に。
    平日の昼間から喫茶店に行く30歳前後のわれわれ。
    その境遇はおして知るべし。

    実は駅からそこそこの距離感でした。
    マンションの1階にある、控えめな喫茶店を発見。

    ココです。

    出典:食べログ

    大雨で平日だったためか、店内はお客さんが誰もおらず、貸切状態。

    店内はいかにも昭和な喫茶店。いい感じです。入り口付近にはインベーダーができそうなゲーム台があり、古くからある喫茶店であることを匂わせます。少し強面なマスターにホットケーキとカフェオレをオーダーしました。

    出典:食べログ

    「どこから来たの?」と聞かれ、マスターとの交流タイム開始。ホットケーキをつくる現場を解説付きで見せていただきました。驚いたのは、型を使っていないこと。事前に知ったあの厚みは、何らか型を使っているものと勝手に思っていました。

    ホットケーキのあの厚みを出すのに、8年かかったとか。
    素材は市販のホットケーキミックス。材料の配合を微妙に変えることで、実現したのだそうです。

    出典:食べログ

    はじめて見た「ホットケーキ焼き機」。じわじわとふくらんでいくホットケーキは、きっと子どものみならず、大人のハートもつかむことでしょう。

    完成したホットケーキのお味は・・


    意外と普通!(笑

    普通のホットケーキの最高峰

    味が普通というのは市販のホットケーキミックスによるもので、よく親しんだ味になるのでしょう。もともとホットケーキをつくるようになったのは、喫茶店に遊びに来る小学生に「食べたい」と言われてつくり始めたのがきっかけだそうです。そこからもっとよくできないか? というマスターの飽くなき探究心で行き着いたのがこの厚み。

    そんなマスターの優しさと職人魂によって完成されたホットケーキは、「普通のホットケーキの最高峰」と言えましょう。聞いたわけではありませんが、子どもを驚かせてやりたい、そんな想いもあったのではないかな・・・などと想像しました。

    味は普通においしかったですが、マスターの人柄やこだわり、エピソードに思いをめぐらせると、一味ちがうありがたみがわいてきます。これから行かれる方にも、このあたりを想像して召し上がっていただけると、個人的にはうれしく思います。


    ホットケーキの厚みは店主の厚み

    接客が好きというマスターとの会話は途切れることなく、いろいろなお話を聞きました。中でも繰り返しマスターがおっしゃっていたのは、
    「続けることが大事なんだよ。人間、ずっと続けていれば、きっといいことがある。」
    大学時代から新宿の喫茶店でアルバイトし、ずっと喫茶店一筋というマスターの言葉はなかなか響くものがありました。

    土日になると全国各地からお客さんがやってきて、行列必至だそうです。失礼ながら大山という、何か用がなければそう行かないであろう土地に(しかも駅からそこそこ歩く)、全国からお客さんを呼び寄せるピノキオさんはすごい。

    他にもいろいろなお話をうかがいましたが、マスターのプロ意識や何年も工夫し続ける姿勢、何よりも好きな仕事をしているという人間的な厚みが印象的でした。それがまるでホットケーキの厚みとなってあらわれているかのようです。(うまうこと言いましたよ、今)


    クチコまざるを得ないビジュアル

    お店がはやるきっかけはクチコミだったようで、お店がはやる前から芸能人の方も常連さんでいらしたとか。メディアに掲載されることも昔はあったそうですが、今は極力お断りしているそう。写メールが出はじめてから、一般の方のクチコミも増えた印象があるとおっしゃっていました。

    やはり教えたくなる、自慢したくなるビジュアルというのは強いですね。


    ホットケーキの厚みがポイントであることは明らかですが、それは8年がかりで探求し続けたマスターの努力の賜物です。しかも市販のホットケーキミックスで。マスターはネットをご覧にならないようですし、狙ってやって厚みではないと思いますが、「おぉっ」と心が動く要素はクチコミにおいて大事ですね。

    そういえばこんな本が出てて、気になっています。まだ読んでませんが・・


    なくなってほしくない喫茶店の代表格

    「好きなことをして、ごはんが食べられるなら、言うことはないよね。」
    あまり多くを求めず、一つのことを続けてこられたマスターの言葉は、謙虚に生きることの幸せを示唆しているよう。平日から喫茶店に出入りするような若輩者の私には、刺さる言葉ばかり。思い出深い喫茶店になりました。お店の方との交流っていいですね。

    日々真面目に営業されていて、地元に愛される喫茶店。
    こんな土着的で、人間くさい喫茶店が好きです。

    不況で厳しい時代もあったそうですが、元気なうちはお店を続けたいというマスター。引き際も考えているとおっしゃっていましたが、ぜひ続けていただきたいです。



    お店をあとにする時間まで、結局お客さんは自分たちのみ。
    終始マスターと話し込んでしまいました。

    久々に会った友人と「いい年をして何をやってるんだ! この野郎!」と罵りあう予定でしたが、それはまたやりましょうね、ということで。(笑


    そう言えば、なんでお店が「ピノキオ」という名前なのか聞き忘れました。

    最後に。
    おやすみの日は混雑するそうですので、可能なら平日をおすすめします。ホットケーキは一度に4人分しかつくれないので、待ち覚悟で行く必要がありそうですよ。


    関連ランキング:喫茶店 | 大山駅下板橋駅板橋区役所前駅

    おすすめ度:★★★★☆
    喫茶   :珈琲、紅茶
    明るさ  :普通
    時代性  :昭和
    雰囲気  :落ち着いた木の癒し
    客層   :幅広いと思われます
    喧騒   :おやすみの日は混雑しているそうです
    店員さん :接客好きなマスター。余裕があれば会話を楽しみたい。
    長居可指数:おやすみの日はゆっくりするのは難しそう
    ご予算  :普通(珈琲500円前後)
    ノマ度  :電源類は基本なさそう
    お手洗い :そういえば行ってません・・

    ※その他知りたい感想があれば、Twitterなどでお声がけください。
     完全主観で回答します。