• 「静寂の昼下がり」月光茶房(表参道)


    もう長年利用しているfoursquareという位置情報系サービスに、「珈琲の名店12選+α(東京)」なるリストをつくっています。最初はある情報を元に12店だけ登録していたのですが、友人に進められたり、新たに情報を入手したりして追加していたら「+α」がふくれあがり、合計48店になってしまいました。今も着々と増殖しているので、私の旅はしばらく終わりそうもありません。

    今回はそんなリストに最初から入っていた「月光茶房」へ。

    表参道の裏手で、「LOTUS」や「パンとエスプレッソと」などの有名店も立ち並ぶ道にあります。変わり種で「文房具カフェ」も。ここは何か名前をつけたい道ですね。「おしゃれカフェストリート」…実に、実に安直ですね。「OCT」と略してお茶を濁しましょう。ちなみにNHKは日本放送協会の略です。DHCは大学翻訳センターの略です。なぜ、翻訳から化粧品へ移っていったのかが気になります(余談)。

    月光茶房はビルの地下1階に位置していますが、同ビルの地上1階が「LATTEST Omotesando Espresso bar」というお店で、これまた有名な「STREAMER COFFEE COMPANY」の澤田洋史さんが監修されたお店があります。そちらはいかにもおしゃれな表参道人たちが、あふれんばかりの若いオーラを放っていらしたので(しかも美人バリスタさんがいらっしゃるらしい)、その輝かしく賑やかな空気に己の自信を溶かされないよう、腰を極限まで低くして(気持ちの上で)地下の月明かりを求めたのでした。



    地下、と言っても吹き抜けなので明るいですが、ドアが鉄のように冷たい趣で、そこにいざ手をかけるのに、少しばかり勇気がいります。まるではじめて一人でバーに行くときのような、そんな感覚です。私は一人でバーに行ったことはないのですが。

    心理的に重い引き戸を引くと、中はコンクリートベースで近代的な空間。長いカウンターのみですが、木のカウンターがどこか温かみをもたらし、そこに心のよりどころが宿っているようでした。どこまでも鉄とコンクリート、プラスチックで構成された“ドモダン”な空間は得意ではないのですが、こちらは大丈夫でした。

    赤パン(赤いズボン)をお召しで、後頭部がモヒカンのマスターさんはいかにも音楽好きと見受けます。実際、店内の一角には多数のCDとプレイヤーが。天井付近に設置されたスピーカーにもこだわりを感じます。入店した際、お客さんが誰もいなかったこともあり、このマスターと音楽との対峙が、私に一段と強い印象をもたらしました。

    音楽には疎い私なので、どのような選曲であったのかを語ることはできません。下手に推測すると、お店の名を汚すかもしれませんので。ただ、けだるい音が漂っていた、と言うにとどめましょう。

    こちらはひたすら静かな場所でした。
    上階の若い空気はどこ吹く風。
    入口の鉄の扉の意味を考えました。

    カウンター越しに整然と並べられた和風のカップ&ソーサーも、なかなか清々しいものがあります。すべてコンプリートしたいおもいに駆られました。

    私はカプチーノ・コル・ラテ(深煎り珈琲+フォームド・ミルク/650円)と桜のシフォンケーキ(250円)を頼み、1時間弱のひととき。途中の来店者も一人だけ。露骨に花粉症の若い男性がお一人で来店し、ベーコンのサンドイッチと珈琲を注文されていました(後にケーキも発注)。マスターさんがベーコンを焼く様をぼんやりと見つめる時間もいいものです。

    ティッシュを量産した男性も帰られたので、我々も続いてお店を後にしました。お店は再びマスターだけの空間に…。きっと店内に響き渡る音楽に身を任せるのでしょう。

    私のように喧騒が得意でない御仁たちにおすすめのお店でした。今後も静かなお店でありますように。また喧騒に疲れたらお邪魔させていただきます。


    月光茶房
    月光茶房(食べログ)
    珈琲の名店12選+α(東京)(foursquare)